若狭塗を起源とした塗箸の一大産地、福井県小浜市。箸メーカー「マツ勘」は創業百余年を迎えた。箸を生業とした長い歩みの中で繰り返される「未来への技術の伝承」という自問。気づけば若狭塗の職人は数名を残すのみとなっていた。
若狭塗の魅力は何といってもその模様の美しさにある。マツ勘に代々保管されている模様帳には、実に200を超える伝統模様が記されていたが、現在流通している柄は産地を見渡してもわずか数種類。多くの模様は、技術として継承されることはおろか、存在を知られることも叶わず、産地の記憶から消えていこうとしていた。
「長く日の目を見ることのなかった技法を、 もう一度現代に生まれ変わらせることができたら」
それはまだ見ぬ美しさという一面だけでなく、新しい価値観や感性を生み、これから先、若狭塗を次世代に繋ぐきっかけになるのではないか。そう考え、再び模様帳が開かれ、ものづくりが始まることとなった。